2013, Mar.
毎回言ってしまうのですが、生きるということは、死ぬまでの暇つぶしで、
どうやって、その、暇をつぶしたかが人生で、暇をつぶすその行為が生活なので、
とりあえずこれも暇つぶしで、何年先も、こうやって、
港でも見ながら暇つぶしができたら、とてもたのしい。
踊れ! 未来の肉。
いわゆるショーケース的な小品や“研究”と銘打たれた作品など、ここ数年は実験的なクリエーションが続いていたモモンガ・コンプレックス。しかし、「50年後に再演する」想いで挑んだという本作『秘密も、うろ覚え。』は、それらとは異なる“覚悟”を感じさせた。
冒頭、ファンファーレとともにレオタード姿のダンサーたちが登場する。自分の手足の存在に初めて気付いた赤ん坊のように、全身からエネルギーを放出させる彼女たち。やがて色とりどりの衣裳を纏って華麗な群舞を披露すると、喝采(の音響)とともに幕の向こうへ去っていった……ここまでが“序章”だ。
続くソロでは、それぞれが身体へ向き合う姿が描かれる。愛嬌ある仕草で周囲とコンタクトをとろうとする者、ストイックなまでに自分の身体を確かめ続ける者、音楽に合わせて舞台を飛び回る者……興味のベクトルは五人五様だが、全員集まると途端に、上を下への姦しさ。楽器や風船、ボーリング(!)まで飛び出しての大騒ぎが繰り返される。
その狂想ぶりを少し離れて見ていた白神ももこが、舞台中央につと進み出た。彼女の肩に、秋の夕暮れのような光が降り注ぐ。そのままゆっくりと身体が丸まり老婆のようなシルエットになると、手足が宙で小さな弧を描き始めた。ただ凪いでいるようにも見えるが、冒頭の群舞をなぞっているようでもある。そうして身を揺らす彼女の姿は実に幻想的で、恍惚として美しかった——。
わずか1時間程度の作品だが、そこに描かれていたのは確かに、あるダンサーの半生だった。と同時に、30代に入り心身ともに変化を感じている(であろう)彼女たちの、“踊り”への覚悟とも感じられた。
モモンガ・コンプレックスにとって大きな一歩となった本作。「50年後」と言わず、できれば10年後、20年後にもぜひ上演してほしい。その瞬間瞬間を織り込んで踊る彼女たちの“最新形”に、きっと出会えるはずだから。
北川姉妹